所得不平等の空間分解の推定
産業数理統計セミナー
開催期間
2025.6.20(金)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
W1-C-502 大講義室
講演者
川久保 友超 (千葉大学 大学院社会科学研究院)
概要
アブストラクト:本研究では,一般化エントロピー(GE)と呼ばれる尺度を用いた所得不平等の推定問題に取り組む。母集団がいくつかの部分母集団に分割されるとき,GEには,群間不平等(between inequality)と群内不平等(within
inequality)への分解可能性という性質がある。そこで,日本の行政区間における全国・都道府県・市区町村という階層構造を考慮した上で,GEの多段階分解を推定し,不平等の寄与度分析を行うための手法を検討する。分解に整合的な推定値を得たい一方で,全国・都道府県・市区町村ではサンプルサイズが大きく異なり,サンプルサイズに応じた適切な複雑さのパラメトリック分布を仮定したい。そこで,それぞれの階層に適切なパラメトリック分布を仮定した上で,分解への整合性を制約とした制約付きベイズ推定量を用いて,各都道府県および各市区町村のGEを推定する。この手法は,1つ上の階層の推定値をベンチマークとしたベンチマーキングの手法の1つと理解できる。さらに,パラメトリック分布のパラメータに,補助変数を用いた回帰関数とリンクさせる構造を考慮することで,特に市区町村における小標本問題に対処するようなスムージングの効果を導入する。先述のベンチマーキングが「タテのborrowing strength」であるとすると,補助変数を用いたスムージングは「ヨコのborrowing strength」であり,各市区町村の推定がさらに安定することを確認する。