医学研究における標準的生存時間分析・競合リスク・マルチステートモデル
統計科学セミナー
開催期間
2024.7.26(金)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
C-502大講義室
講演者
室谷 健太(久留米大学 医学部 医療検査学科)
概要
アブストラクト:
生存時間分析はあるイベントが起こるまでの時間をアウトカムとした統計解析手法の総称である。多くの臨床研究で広く用いられている生存時間分析(標準的生存時間分析)の特徴は、考えるイベントがただ1つで、それ以外の理由による追跡不能は全て打ち切りとして取り扱う点である。しかし、興味あるイベントの発生を妨げたり、その発生確率に影響を与えうる事象が存在する場合、その事象を打ち切りとして取り扱ってしまうと、興味あるイベントの発生確率の推定値にバイアスが入ることがよく知られている(例えば興味あるイベントを癌の再発としたときの死亡がその事象に該当する)。そのような事象は競合イベントと呼ばれ、競合イベントの存在が興味あるイベント発生確率の推論に与える影響を適切に処理した競合リスクモデルが必要となる。競合リスクモデルは興味あるイベントと競合イベントのうち、最も早く発生したイベントの発生によって観察終了としなければならない点が大きな特徴である。しかし、あるイベントが発生した後のイベント発生確率についても推論したい場面も応用では少なくないため、競合リスクモデルにはさらなる拡張が必要であり、それを可能にするのがマルチステートモデルである。本講演では標準的生存時間分析、競合リスクモデル、マルチステートモデルの考え方と医学研究における実例を解説する。