Picard-Fuchs方程式を用いた荷電球対称時空におけるテスト粒子の散乱角の解析
数理物理セミナー
開催期間
2024.12.19(木)
16:30 ~ 18:00
16:30 ~ 18:00
場所
W1-C716
講演者
佐々木 伸(熊本学園大学)
概要
アブストラクト: 一般相対性理論において,古典的なテスト粒子の軌道は与えられた時空(擬リーマン多様体)の測地線として記述される。 本講演では荷電球対称時空におけるテスト粒子の散乱角を考える。この時散乱角は積分表示を持つことが知られているが,ここではその積分表示が満たすPicard-Fuchs方程式に着目する。 最初に最も簡単なブラックホールのモデルであるSchwarzschild時空における無質量粒子の散乱角が,粒子の軌道の衝突係数を独立変数として,非斉次項を伴うGaussの超幾何方程式を満たすことを示す。 続いてSchwarzschild時空の一般化の1つである,荷電球対称時空を表すReissner-Nordstrom時空における無質量粒子の散乱角が,粒子の衝突係数と時空の電荷に対応する二変数について非斉次の線形偏微分方程式系を満たすことを示す。 さらにその偏微分方程式系と等モノドロミー変形及びPainleve VI方程式(PVI)の代数解との関係について解説し,PVIの特異点において背景時空や粒子の散乱角の振る舞いが定性的に変化することを議論する。 時間が許せば,これらの議論をより一般の時空や質量を持つ粒子の散乱角の計算へと拡張することの他,波動方程式の解との関係について簡単に述べる。