量子Ising模型に対するレース展開
数理物理セミナー
開催期間
2025.3.27(木)
16:30 ~ 18:00
16:30 ~ 18:00
場所
W1-C-616
講演者
上島芳倫(東洋大学)
概要
アブストラクト:強磁性体のモデルの一つにIsing模型がある.これは温度パラメーターを変化させることによって帯磁率が冪的に発散するなど臨界現象を示すことが知られている.臨界指数と呼ばれるその冪指数には普遍性があることが予想されており,特に高次元ではIsing模型の臨界指数が対応する相互作用の無いモデルのそれに一致する.ところで,Ising模型に横磁場を印加したモデルを量子Ising模型という.古典的なIsing模型ではHamiltonianがz軸方向のPauli行列のみで与えられた一方で,これはz軸方向のみならずx軸方向のPauli行列で与えられるので,それらの非可換性のために量子効果が生じる.量子効果によって,温度のみならず横磁場の強さを変化させることによっても相転移が起こる.本講演では,鏡映正値性を仮定すれば,高次元に於いて量子Ising模型の帯磁率の臨界指数が 1 になることを示す.また,鏡映正値性に頼らずにそれを示すための試みとして,レース展開を導出したい.その現在までの研究結果についても述べる.本研究は坂井哲(北海道大学)との共同研究である.