時間依存性交絡がある場合の治療効果推定法の改善: 周辺構造モデルの変数選択法と新たな逆確率重みの提案
統計科学セミナー
開催期間
2025.5.23(金)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
W1-C-502 大講義室
講演者
瀬谷 のどか(東京医科大学 大学院医学研究科)
概要
医療における実臨床とりわけ慢性疾患領域では,患者が常に同じ治療を受け続けるとは限らず,しばしば治療への反応(例:検査値)に基づいた治療の切り替えや中止が起こる.これは時間依存性交絡を引き起こし,通常の時間固定的な治療に対する交絡よりも治療効果の推定を難しくさせる.このような場合でも治療効果を推定可能な方法の一つが,周辺構造モデルの逆確率重み付け推定法である.逆確率重み付け推定法は通常の交絡の設定でもよく用いられるが,推定量のばらつきが大きくなり得ることが問題として指摘されている.時間依存性交絡の設定では,全ての時点の寄与を掛け合わせる逆確率重みの構成上この問題がより深刻となる.また,周辺構造モデルは治療履歴と潜在アウトカムの関係についてのモデルであるが,これを誤特定するとバイアスやばらつきが増大することが問題となる.本講演では,これらの問題を改善するための方法として新たな逆確率重みと周辺構造モデルの変数選択法を提案し,数値実験や実データ適用の結果を報告する.導入として,因果推論の基本事項や時間依存性交絡についても簡単に説明する.