Geometric approach to Coulomb random point fields --コンパクトリーマン多様体と対数微分を用いたクーロン点過程の新しい構成法
開催期間
16:30 ~ 18:00
場所
講演者
概要
Coulomb点過程というのは、d次元ユークリッド空間で、
d次元クーロンポテンシャルで相互作用する無限粒子系を記述する点過程である。
ユークリッド空間とポテンシャルの次元が一致しているのがポイントで、
クーロンポテンシャルには、遠方でのポテンシャルの可積分性が無い、という困難さがあった。
長い間、2次元ユークリッド空間で2次元クーロンポテンシャルを考えた場合で、逆温度β=2の時だけ、
クーロン点過程 はランダム行列理論を介して構成されていた。
つまり、Dobrushin-Lanford-Ruelleが、Gibbs測度の理論を、1970年前後に確立したが、この理論は
クーロンポテンシャルという自然界で最も重要なポテンシャルには、適用できなかったのである。
従来、 Coulomb点過程
は唯一つの場合(Ginibre点過程)しか、構成できていなかった。
ようやく最近になって、Armstrong-Serfaty
やThomaによって、Coulomb点過程が一般次元、一般の逆温度に対して構成された。
この証明には多くの長い計算を必要とする。
本講演では、対数微分の概念とコンパクとリーマン多様体を用いてCoulomb点過程を構成する新しい方法について述べる。
この方法は簡明であり、bulkのCoulomb点過程を超えて、Riesz
potentialをはじめ、多くの対象に適用できる。
特に、Airy_{\beta}にも適用できる。Airyは、soft-edgeのRiesz点過程である。
(別の種類の議論も必要なので、今回は、Airyを議論する予定はない)
更に、このCoulomb点過程とリーマン多様体の関係は、Lie群や対称空間に適用すれば、
その対象に応じた様々な構造を解明できると思われる。
一つコンパクト リーマン多様体とその中の基点を与えるごとに、一つのbulk
Coulomb点過程が構成できるというのが主結果である。
今回の結果から、各 コンパクトリーマン
多様体とその基点に応じた様々な、Coulomb点過程が構成できることになった。
球面やトーラスをリーマン多様体として採用すれば、それぞれ回転不変や平行移動不変なCoulomb点過程が構成できる。
一般の場合は、それに応じた(より不変性の低い、あるいは、様々な種類の自由ポテンシャルをもつ)
多様なCoulomb点過程が出現する。
尚、この講演は鹿児島大学の長田翔太氏との共同研究に基づく。