行列分解問題における変分ベイズ自由エネルギーの平衡解
統計科学セミナー
開催期間
2025.8.26(火)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
W1-C-502 大講義室
講演者
川澄 亮太(群馬大学 数理データ科学教育研究センター)
概要
アブストラクト:
行列分解問題とは, 与えられた観測行列を2つの低ランク行列の積として表現する問題であり協調フィルタリングや画像処理など, 情報科学におけるさまざまな応用に用いられている. この問題に対する解析的手法の一つに変分ベイズ法があり, 特に中島氏および杉山氏(2010)によって変分自由エネルギーの最小化を通じて分解行列の逐次代入による近似解が導出された. しかし, この逐次代入アルゴリズムにおける収束解の安定性や構造に関しての理論的な理解が未だ十分ではない. そこで本講演では, Amit氏ら(1985)により提案されたHopfield模型の自由エネルギー形式を行列分解問題に援用し, 行列分解問題における変分ベイズ自由エネルギー上での平衡解析手法を提案する. 具体的には, まず中島氏および杉山氏(2010)によって得られた変分自由エネルギーと秩序変数(行列分解問題としては正解行列と復元行列の重なりや干渉ノイズなど)を用いて分配関数を導出する. 次に分配関数のその鞍点評価により自由エネルギーを導出し, 最後に平衡状態を記述する閉じた状態方程式で明示的に導出する. 本手法により従来の逐次代入アルゴリズムの収束後の振る舞いを理論的に捉えることが可能となる. なお本研究は茨城大学の竹田晃人氏および玉井智貴氏との共同研究に基づくものである.