(解説)Ising および phi^4 場の理論の4次元時空における triviality について
開催期間
16:30 ~ 18:00
場所
講演者
概要
「4次元時空で『相互作用のある=自由場ではない』場の量子論が構成できるか?」というのは 数理物理学の大きなテーマの一つですが,非常な難問です.特に「『スカラー場の理論』を用いる限り, これは不可能であろう」というのが1970年ごろからの大方の予想になっていました(trivialityの予想). しかしこの予想の厳密な証明は非常に難しく,数十年の未解決問題でした. 2019年,Aizenman と Duminil-Copin によって,この問題がほぼ満足のいく形で解決されました — 5次元以上の時空では Aizenman と Froehlich によって 1981年にほぼ解決ずみ. また Duminil-Copin はこの仕事を含む一連の仕事によって,2022年の Fields 賞を受賞しました.
(色々と限定条件はついています.主なものは「格子正則化の極限としての場の理論を考える」 「Ising または phi^4 型のスピン系から出発する」「スピン同士の相互作用は強磁性型, 最近接,並進対称」「スピン系としての高温相または臨界点直上での連続極限のみを考える」 などです.これらの条件の下では,連続極限で構成した場の理論は一般化された自由場になる, というのが結論です.)
本講演では,この重要な結果の解説を行います.
第1回目では「何が問題か」「結果の正確な記述」「使う道具の概要」などを説明し,続く2回で(参加者の興味に応じて)技術的な詳細をお話しする予定です. (お断り)原自身は,この問題の解決には全く寄与していません.この講演はあくまで2019年の仕事(およびそれに先行する結果)の解説を行うものです.また,2019年の解析は非常に大変なので,その概要しか触れられないと思われます.
(主要文献)
Aizenman and Duminil-Copin: Marginal triviality of the scaling limits of critical 4D Ising and 𝜙4 models, Ann. Math. vol. 194 (2021), pp. 163-235
Aizenman: Geometric analysis of 𝜑4 fields and Ising models. I, II, Comm. Math. Phys., vol. 86 (1982), pp. 1-48
Froehlich: On the triviality of λϕ4 theories and the approach to the critical point in d(−) > 4 dimensions, Nucl. Phys. vol. B200 (1982), pp. 281-296
(参考文献) 田崎 and 原:相転移と臨界現象の数理, 共立,2015
新井,河東,原,廣島:量子場の数理 : 数理物理の最前線, 数学書房, 2016
Fernandez, Froehlich, Sokal: Random Walks, Critical Phenomena, and Triviality in Quantum Field Theory, Springer 1993