3次元多様体のホモロジー同境単系とbounding genusについて
開催期間
16:00 ~ 17:00
場所
講演者
概要
Bounding genusは1982年に松本幸夫氏によって導入された3次元ホモロジー球面の
ホモロジー同境不変量であり、ホモロジー同境群におけるある種の距離を与える。
松本氏は、Dehn-Kirby計算によって、幾つかのホモロジー球面の無限系列に対して
bounding genusの上界を与え、その改善の困難さを、4次元スピン閉多様体の第2Betti数と符号数の間の不等式として定式化した。これが現在、「11/8予想」と呼ばれている。
一方、Seiberg-Witten理論において、古田幹雄氏によって導出された10/8不等式は、11/8予想よりは弱い不等式であるが、bounding genusの下界を与え、実際、V多様体に適用することで、Brieskornホモロジー球面の幾つかの無限系列に対してbounding genusの値を決定することができる。
筆者は、古田幹雄氏と亀谷幸生氏によって改良された10/8不等式に現れる4次元スピン閉多様体の1次コホモロジーの4重カップ積に着目し、3次元多様体のスピン同境圏からホモロジー環のなす代数的な圏への関手Φを構成することで、代数的な射を実現するスピン同境の「長さ」としてbounding genusの一般化(Φ-bounding genus)を試みた。
本講演では、これまでの流れを踏まえながら、その部分圏である3次元多様体のホモロジー同境圏におけるΦ-bounding genusの振る舞いについて調べたい。特に、ホモロジー同境圏の連結成分であるホモロジー同境単系の構造や、二つの3次元多様体とそのホモロジー環の代数的射に付随して構成される非結合代数と、Φ-bounding genusとの関係について考え、幾つかの課題について述べる。