空間中央値・一般化経験尤度法によるVARモデルの頑健な推測理論
統計科学セミナー
開催期間
2022.11.25(金)
16:10 ~ 17:10
16:10 ~ 17:10
場所
C-512中講義室
講演者
明石 郁哉 (東京大学 経済学部)
概要
分布の裾が厚い誤差過程から生成される自己回帰モデルは無限分散確率過程の代表例であり、これまで中央値回帰をはじめとする頑健な解析手法が提案されてきた。しかし複数系列のデータを同時に扱うためには多次元確率過程によるモデリングが必要であり、理論の拡張が望まれる。本講演では、ベクトル自己回帰モデル(VARモデル)に対して中央値回帰の手法を多次元化して適用し、係数行列の推定量を構成する。さらに自己加重法を用いて統計量を頑健化し、漸近正規性をもつことを示す。一方で係数行列に対する非線形仮説の検定は、モデル診断や予測子の構成の際に基礎的になる。そこで非母数的な尤度を構成する手法である一般化経験尤度法を用いて統計量を構成し、実行可能な検定方式を構成する。本研究で用いる統計量は、モデル誤差項に特定の母数モデルを仮定せずに計算可能であり、広範なモデルに適用できる。またモデルの有限分散性・無限分散性や分布の裾指数などの局外母数の事前知識は不要であり、常に同一の手法で解析ができる点も提案手法の利点である。