同期したシステム間の結合を振動時刻データから推定する
統計科学セミナー
開催期間
2022.4.22(金)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
Zoomでのオンライン開催(事前承認制)
講演者
森 史(九州大学芸術工学研究院)
概要
約24時間周期の概日リズムや約1秒間隔の心臓の拍動など、生物に見られる多様なリズムは、振り子時計にもたとえることができる「振動子」から作り出されている。これらの系がノイズにさらされた中でも安定したリズムを生み出せている理由は、複数の振動子が相互作用することで同期状態を維持しているからである。2つの振動子がしっかりと同期している場合、振動子間の結合が強いようにも思えるが、同期を妨げるノイズが無いがゆえに結合が弱くても同期できているという可能性もある。結合が強いこととノイズが小さいことは、区別できるだろうか。論文[1]では、確率的なノイズのある結合位相振動子モデルを用いて、振動子間の結合およびノイズの大きさを、振動の時刻のデータだけから同時推定する公式を導出した。公式の有効性は、FitzHugh-Nagumoモデルにおける数値シミュレーションにより確認された。さらに、推定理論を非対称な結合系に拡張することに成功し、現在、その検証のためメトロノームを非対称に結合させた実験系を構築している。本講演の理論部分は、郡宏氏(東大)、実験部分は、岩見貴弘氏(九大)、伊藤浩史氏(九大)との共同研究に基づく。
[1] FM and H Kori, Proceedings of the National Academy of Sciences 119 (6), e211362011