力学系の作用素論的データ解析〜再生カーネルを用いた方法とその周辺
統計科学セミナー
開催期間
2019.7.5(金)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 中セミナー室 W1-D-710
講演者
河原 吉伸 (マス・フォア・インダストリ研究所,教授)
概要
飛躍的な計測技術・情報インフラの発展を背景に、データ駆動による科学的知識の抽出が近年様々な領域において重要な課題として認識されている。柔軟な統計的モデリングや逆問題へのアプローチを与える機械学習は、このような場面でキーとなる枠組みとして機能する。これに関連して本講演では、多くの科学・工学分野において重要となる、データを用いた動的なプロセスの解析に関して、力学系の作用素表現と機械学習に基づいた研究について紹介する。
近年、力学系の作用素表現に基づく解析、特にクープマン作用素を用いた解析は、その汎用性や物理的概念とのつながり、また動的モード分解などの推定法の発展もあり注目を集めている。動的モード分解は,非線形性が内在する多次元時系列データから、固有の周期性と減衰率を持つモードへの分解を計算する方法として、当初は流体力学分野で提案された。その後、力学系のクープマン作用素を用いた表現との関係を数理的に議論することができることが明らかになり、最近では、当初本方法が提案された流体力学分野に限らず、脳科学や地球科学などの複数の科学領域への適用が進むと同時に、工学的応用も散見されるようになってきている。
本講演では、上記のような一連の研究に関連して、力学系の作用素表現の推定問題について着目し、最近の話題を中心に紹介する。特に、機械学習分野でよく用いられる再生カーネルを用いた方法について、動的モード分解の拡張や、力学系上の計量の導出や学習への利用などについて述べる。この中で、我々が取り組んでいるものを中心に、いくつかの応用事例についてもふれる。