観測誤差が存在する場合の quadratic variation のファクター数の推定と検定
統計科学セミナー
開催期間
2019.4.24(水)
00:00 ~ 16:30
00:00 ~ 16:30
場所
九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 中セミナー室 W1-D-710
講演者
栗栖 大輔 (東京工業大学工学院経営工学系)
概要
計量ファイナンスでは複数の金融資産のリターンが少数の共通要因(ファクター)によって決まるとするファクターモデルがしばしば利用される. 特に近年, 高頻度金融データ分析においてもファクターモデルによる実証分析や理論解析が行われるようになってきており, データからファクターの数をどのように決めればよいかというのはリスク管理上重要な問題である. 実際にデータからファクターの数を決めるには, 多変量解析で知られているように金融資産のリターンの分散共分散行列のランクを推定・検定できればよい.
本報告では金融資産のリターンが伊藤セミマルチンゲールに従うと仮定し, リターン過程を観測誤差を伴って高頻度離散観測する場合における quadratic variation (QV) のランクの検定手法を提案する. 具体的には separated information maximum likelihood (SIML)法を用いてQVと観測ノイズの分散共分散行列を推定し, ある特性方程式の解として得られる固有値を利用して検定統計量を構成する. さらにQVが特定のランクをもつという帰無仮説の下での検定統計量の漸近分布を導出する. また数値実験により提案手法の有限標本でのパフォーマンスを確認し, 提案手法の応用例として東京株式市場の主要5銘柄のファクター数の推定結果を報告する. 時間があれば本研究内容の拡張についても報告する.