非エルゴード的統計と漸近展開
統計科学セミナー
開催期間
2016.10.20(木)
16:00 ~ 17:30
16:00 ~ 17:30
場所
九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 中講義室 W1-C-515
講演者
吉田 朋広 (東京大学)
概要
有限時間高頻度観測におけるセミマルチンゲールのボラティリティパラメータの推測は典型的な非エルゴード統計学の問題である.90年代に整備された混合正規型極限定理によって1次の漸近理論が発展した.より深い解析のために,推測の高次有効性,統計的予測,リサンプリング法,情報量規準,情報幾何等の分野において,漸近展開の方法が基本的な役割を演じていることは,とくに独立観測に対する漸近理論の歴史が教えている.従属性のある場合,エルゴード系に対して確率過程の分布論的漸近展開が90年代以降発展したが,非エルゴード系に対する漸近展開が可能になったのは最近数年のことである.正規極限の漸近展開に対応するadaptive random symbolと,非エルゴード系で新たに現れ,Malliavin微分を含むanticipative random symbolによって展開公式が与えられる.この方法は,リアライズドボラティリティ,p-バリエーション,マイクロストラクチャーノイズ,ボラティリティパラメトリック推定,情報量規準sVIC,Euler-Maruyama近似,Skorohod積分の漸近展開に発展している.ここでは,マルチンゲール展開の方法と幾つかの応用に関して議論したい.