次世代シーケンスデータで捉える細胞核内の情報処理システム:クロマチン
統計科学セミナー
開催期間
2016.2.12(金)
15:30 ~ 16:30
15:30 ~ 16:30
場所
九州大学 伊都キャンパス ウエスト1号館 中セミナー室 W1-D-710
講演者
前原 一満 (九州大学 生体防御医学研究所)
概要
細胞固有の形質は特定の遺伝子セットの選択に規定される。主要生物のゲノム解読が完了したいま、生命科学は、ゲノムにコードされた情報の「使われ方」の解明に注力している。私は、次世代シーケンサ(NGS)と呼ばれるマシンを活用し、ゲノムと構成タンパク質の複合体であり、いわば細胞の情報処理システムのコアといえるクロマチンを題材に、細胞分化時における遺伝子選択メカニズムの解明を目指している。
NGSは、短いDNA断片を大量に読み取るマシンであり、現代の生命科学研究に欠かせないツールのひとつである。これまで、遺伝子発現量を網羅的に測定するためのRNA-Seq、タンパク質の全ゲノム上の分布を知るためのChIP-Seq、細胞核内のゲノムの立体構造を知るためのHiC/3C-Seqといった、生物学のニーズに応じた様々なアプリケーションが生み出されてきた。すなわち、細胞核内は、ゲノムの立体構造、タンパク質の量や局在がダイナミックに変化することで、ゲノム情報の取捨選択が行われる場であるといえる。
本セミナーでは、主に上記の3つのアプローチ(*-Seq)により得られるデータの解析手法について、現在主流あるいは次期スタンダードとなりそうな解析ソフトウェアを(半ば独断で)例に挙げながら、それらの基礎となっている計算機科学や統計科学の技法についてレビューする。また現在私自身の取り組んでいる課題についても、具体的なNGSデータとともに紹介したい。