配置空間上の無限次元幾何解析とその応用
開催期間
16:30 ~ 18:00
場所
講演者
概要
基礎の空間X上の配置空間Y(X)とは,X上の局所有界な点測度全体の空間である.配置空間Y(X)は,数学の様々な分野で研究されており,例えば,X上の可算無限個の相互作用する粒子の運動の記述,Y(X)上の(無限次元)幾何学の研究,X上の微分同相写像群の表現論,などである.本講演では,Xが滑らかな構造を持つとは限らない場合(例えば,リーマン多様体のグロモフーハウスドルフ極限に現れるような特異な空間)で,さらに一般的な不変測度(quasi-Gibbs測度を含む枠組)で,Y(X)上の解析的な構造(Dirichlet形式)を構成し,幾何学的な構造(2-Wasserstein距離から入る拡張された意味での測度距離空間)との関係を論じる.Rademacher型の定理や,その逆のSobolev-to-Lipschitz型の定理を証明する事で,最終的にこれらの2つの構造が一致する事を示す.
この結果の応用として,対応するY(X)上の拡散過程についての2-Wasserstein距離に関する積分型のVaradhan型短時間挙動が広いクラスの不変測度に関して得られる.さらに,この結果は,互いに特異な測度のクラスをまたぐ不変測度の取り方に寄らず,普遍的に2-Wasserstein距離で記述される(Wasserstein Universality).その他にも様々な応用があり,Y(X)上の(synthetic) Ricci曲率の構造,2-Wasserstein距離の有限性問題に関するDirichlet形式のエルゴード性によるアプローチ,Dirichlet形式のquasi-regularityに関する一般的な証明なども得られる.本講演では,空間の滑らかな構造に依存した条件(例えば,不変測度のquasi-invariance)を仮定しないため,多くの結果は基礎の空間Xがユークリッド空間の場合でも新しい.
Lorenzo Dello Schiavo氏 (IST Austria)との共同研究