ランダムな複素力学系における協調原理と複素平面上の特異関数
開催期間
14:45 ~ 18:00
場所
講演者
概要
*曜日にご注意ください。
アブストラクト:
多項式力学系は様々な分野の数理モデルとして扱われてきているが、多項式力学系は様々な分野の数理モデルとして扱われてきているが、環境などの変化で写像が確率的に変化する状況が考えられるので、ランダムな多項式力学系を考えるのは自然である。ここでは複素平面上において独立同分布のランダムな一次元複素力学系を(数値実験を全く使わず)純粋数学的に考える。この場合、決定論的複素力学系と異なり、ほとんどの場合で平均化したシステムのカオス的部分が一切なくなってしまうことを示す。これは複数の写像の「協調・協力」によっておこる現象である。Matsumoto-Tsudaの数値実験によるランダムな実一次元力学系に関する記念碑的論文「Noise-induced order」(J. Stat. Phys. Vol.31, No.1, 1983)の現象に若干似ている。ほかこれまでに数値実験上では、力学系をランダム化すると平均化システムについてはカオスが消えて穏やかになりうるということは多くの物理学者によって観察されてきている。本講演ではまた、ランダム多項式力学系の極限状態において、ある条件下では、悪魔の階段の複素平面上版など、複素平面上で連続だが細いフラクタル集合(付随する半群のジュリア集合)の上のみで変化する複雑な関数が出現することを示す。この複雑な関数の全微分(不)可能性を、エルゴード理論、ポテンシャル論、複素解析を用いて解析する。決定論的システムでは起こりえない、ランダムなシステム特有の興味深い現象とそのメカニズムを、正則写像の半群の力学系理論と組み合わせて組織的に解明する。講演内容はプレプリント
H. Sumi, Random complex dynamics and semigroups of holomorphic maps
http://arxiv.org/abs/0812.4483
に含まれる。