水深の浅い領域における2次元ソリトン相互作用 -- Benney-Luke方程式とKP方程式
開催期間
16:30 ~ 18:00
場所
講演者
概要
*力学系セミナー兼 可積分系セミナー
概要:
KP方程式は、水深の浅い領域において、弱非線形性、弱2次元性を仮定することで得られることが知られている。KP方程式は可積分な偏微分方程式であり、豊富な数理構造を持っており、様々な数学的研究が行われてきた。しかしながら、KP方程式の物理的問題への適用については、懐疑的な研究者が多いのが現状である。その最大の理由は、KP方程式を導出する際に仮定する弱2次元性による。この仮定の元では、KP方程式の持つ興味深い解は物理的な意味を失うと考える研究者が多いようである。最近、Yeh, Li, Kodamaは、浅水波におけるMach反射の実験を行い、KP理論で実験結果を非常によく説明できることを示した。この結果は、弱2次元性の仮定を越えてもなおKP理論が適用できていることを示唆しており、非常にミステリアスな結果である。このミステリーを理解するため、弱2次元性の仮定をしない浅水波の方程式であるBenney-Luke方程式(KP方程式はBenney-Luke方程式に弱2次元性の仮定をして導出される)について調べた。Benney-Luke方程式の弱非線形パラメーターを利用し、近似的な双線形形式を導き、2ソリトン解を構成した。この近似的な2ソリトン解を用いることによって、Benney-Luke方程式の2ソリトン相互作用を分類することができる。この分類は定性的にはKP方程式と同じであり、KP理論が弱2次元性の仮定なしでも定性的には適用できてしまうことを示し、上記のミステリーを説明することができる。最後に、Benney-Luke方程式の数値計算を行い、近似2ソリトン解を用いた解析が、数値計算結果と非常によく合っていることを示す。本研究は児玉裕治氏(オハイオ州立大)、辻英一氏(九大・応力研)、BaofengFeng氏(UTPA)との共同研究である。