位相的エントロピー vs 圏論的エントロピー(体積成長 vs 質量成長)
幾何学セミナー
開催期間
2023.7.21(金)
16:00 ~ 17:30
16:00 ~ 17:30
場所
W1-D-313, もしくはZoom上
講演者
池田 曉志(城西大学)
概要
【講演要旨】位相的力学系とは、(コンパクトな)位相空間とその上の連続写像のペアからなるものであり、連続写像が系の離散的な時間発展を与える。特に、Adler-Konheim-McAndrewにより、時間発展を与える連続写像の複雑さを測る指標として、位相的エントロピーが定義されている。
特に力学系が滑らかなリーマン多様体と滑らかな自己写像により与えられている場合には、自己写像による部分多様体の体積の増加の比率を計算することで位相的エントロピーが計算できることがYomdinにより示されている。 一方、近年Dimitrov-Haiden-Katzarkov-Kontsevich(DHKK)により、圏論的力学系というものが導入された。これは、三角圏とその上の自己関手からなるものであり、DHKKは位相的エントロピーのアナロジーとして、自己関手に対する圏論的エントロピーを導入した。また、三角圏の上のBridgeland安定性条件と呼ばれる構造が、ある場合には曲面上の測度付き葉層構造と同一視出来ることを動機づけとして、安定性条件を用いて定めることができる圏の対象の体積に相当する量(質量と呼ぶ)の増加の比率を計算することで、圏論的エントロピーが計算できることを予想した。
この講演では、位相的力学系と圏論的力学系の対比を曲面の深谷圏を軸にして行いながら、講演者が示した圏論的力学系における質量成長の基本性質に関する定理や質量成長と圏論的エントロピーの間に一般的に成り立つ不等式、さらに両者が一致することが示せたそこそこ広いクラスの三角圏の例などを紹介する予定である。