生物の複雑制御ネットワークを数理的に解明する
力学系セミナー
開催期間
2014.11.6(木)
15:00 ~ 16:30
15:00 ~ 16:30
場所
九州大学 伊都キャンパス 数理学研究教育棟/マス・フォア・インダストリ研究所3F 中セミナー室6
講演者
望月 敦史 (理化学研究所 / CREST, JST)
概要
概要:
生命現象の多くは多数種の遺伝子が関わる複雑なシステムから成り、そのシステム全体のダイナミクスから生命機能が生まれるのだと考えられている。しかし、実験によって得られる遺伝子制御ネットワークは、遺伝子活性が他の遺伝子に与える影響の関係性だけを示しており、ダイナミクスを決定するために必要な関数やパラメータについては不明である。これに対して私は、制御ネットワークの構造だけからダイナミクスの情報を引き出すための数理理論を構築した。これによりシステム全体のダイナミクスを捉えるために十分な変数(ノード)の部分集合を、ネットワークの形だけから決定できる。例えば、ホヤの初期発生にかかわる90の遺伝子を含むネットワークを解析したところ、細胞分化状態の多様性はごく少数の遺伝子で捉えられることが分かった。この理論は数学的に一般化され、グラフ理論におけるFeedback vertex setと、力学系理論におけるDetermining nodesという、二つの数学的概念を結び付ける理論へと発展した。生物学の枠を超えて、化学反応系などの力学系一般に適用できる形へと発展した理論を、その経緯を含めて紹介したい。