一般化された複素射影構造とネヴァンリンナ理論の第二主定理
開催期間
16:30 ~ 17:30
場所
講演者
概要
一般の位置にある線形因子を近似ターゲットとする複素射影空間への正則曲線の値分布に対しては,Cartan / Ahlforsによる強力な古典理論 (1933 / 1941) がある.古典理論を,一般の射影代数多様体への正則曲線が一般の単純正規交叉因子を近似する設定に拡張する問題は,Ahlforsの問題提起 (1941) 以来,長い間未解決である.問題はGriffiths-Lang予想に集約される.この問題を解く鍵は,
・近似ターゲットが属する因子のクラスを定義すること,
・正則曲線のロンスキアンを,それが恒等的に零であることと正則曲線の像がそのクラスの因子に含まれることが同値になるように定義すること
である.講演では,近似ターゲット$D$がvery ample因子と仮定して,十分大きい$m$に対する完備線形系$|mD|$による巨大次元の射影空間への小平埋め込み$X\rightarrow \PP(H^0(X,\Cal O_X(mD))^*)$を考え,$n$次元部分線形系$\PP^n$への射影$\mu:X\rightarrow \PP^n$により分岐を持つ複素射影構造を$X$に導入して,付随するRiemann-Hurwitz公式により定められる分岐因子と正則曲線$f:\C\rightarrow X$のジェットの相対的位置関係に,巨大次元射影空間における測度集中現象を適用してどのような状態が最も確からしいかを考えるというアイディアを導入したい.このアイディアによって,上記の性質を持つロンスキアンを漸近的に定義できる(明示的公式は得られない).しかし,正則曲線が近似ターゲットと交わるときに限れば明示的公式が得られて,Griffiths-Lang予想型の第二主定理を示すことができる.さらに,本来のGriffiths-Lang予想がこのアイディアによりどのように解決されるかを述べたい.本講演は林培強君(名古屋大学)との共同研究に基づいている.