連続講演会(第1回目)
開催期間
10:30 ~ 2014.9.19(金) 12:00
場所
講演者
概要
日時:2014年9月16日(火)~19日(金) (第1回目)
午前の部 10:30~12:00
午後の部 14:00~17:30
場所:九州大学 (伊都キャンパス) 伊都図書館3階 中セミナー室1
講演者: 山下 剛 氏 (京大数理研)
タイトル:
「宇宙際Teichmuller理論とそのDiophantus的帰結」
アブストラクト:
2012年8月、望月新一氏(京大数理研)は宇宙際Teichmuller理論の連続論文(I~IV)を発表した。これは、きわめて大雑把に述べると、スキーム論の外に出て数体の「数論的正則構造」を「変形」し、絶対遠Abel幾何的復元アルゴリズムを使うことで一方の「数論的正則構造」から他方の「数論的正則構造」を軽微な不定性を許して復元し、その帰結としてDiophantus不等式を導くというものである。不定性が軽微なもので抑えられることを示すところ(や「変形」の構成など)において、理論中に出てくる数学的部品たちの性質が絶妙にピタリとあてはまっている。
同氏は、その理論の準備の段階の論文を含め、「単遠Abel幾何と双遠Abel幾何」「数論的正則性と単解析性」「エタール的対象とFrobenius的対象」「多輻性と単輻性と核性」「足し算と掛け算を分離する数論的な上半平面」「数論的な解析接続」「Galois評価原理」などの(重要かつ整理された視点を提供する)独創的な数学的概念・視点を導入し、全く新しい地平を切り開いた。これはDiophantus不等式への応用抜きにしてもそれ自身重要かつ有用な概念・視点である(また、これら以外にも多くの興味深い対応関係や対比がある)。
本連続講演は、理論全体の概観の後、理論の思想的源流(Hodge-Arakelov理論やp進Hodge理論など)について簡単に触れ(同氏の導入した概念や理論は単に新奇であるのではなく、よく理解すればGauss積分やテータ関数のJacobiの等式などの古典的な理論と思想的に深く結びついている)、準備の論文の解説(Belyiカスプ化や単テータ環境の3つの剛性など)をして、本体の論文(キーワードだけを並べると、種々のHodge舞台、種々のテータ・リンクとHodge-Arakelov理論的評価、対数的殻と対数的リンク、対数的Kummer対応、多輻的復元アルゴリズム、対数的体積計算など)に進む予定である。計3週間ぐらいになる予定である。
なお、宇宙際Teichmuller理論は現在詳細の検証中にある。論文発表以降、検証作業は秘匿性のない形においても専門家たちにより良好に進められており肯定的に受け取られているが、何重にもおよぶ検証作業はまだ完全には終わっておらず、この連続講演は検証作業が完了したことを意味するわけではない。