スペシャルラグランジュ部分多様体の特異点解消の一意性について
開催期間
16:00 ~ 17:30
場所
講演者
概要
スペシャルラグランジュ部分多様体はHarvey・Lawson により定義された。スペシャルラグランジュ部分多様体はカラビ・ヤウ多様体の部分多様体として定義され、体積最小部分多様体かつラグランジュ部分多様体である。カラビ・ヤウ多様体を固定しコンパクトスペシャルラグランジュ部分多様体のモジュライ空間を考える。Mclean の定理によりモジュライ空間は多様体(manifold)である。幾何学的測度論を用いればモジュライ空間はコンパクト化される。ミラー対称性によりスペシャルラグランジュ部分多様体は正則ベクトル束に対応すると予想される。正則ベクトル束のモジュライ空間は「良い」構造を持ち、Donladson-Thomas 不変量が定義される。ミラー対称性によりスペシャルラグランジュ部分多様体のモジュライ空間(より正確にはコンパクト化されたモジュライ空間)にも「良い」構造が入ると予想される。モジュライ空間の境界の点は特異点を持つスペシャルラグランジュ部分多様体である。私は特異点が最も単純な場合に境界の点の近傍を決定した。より正確には、特異点集合が1点のみで、その点における接錐が安定T2 錐である場合に、境界の近傍の点を決定した。特に、安定T2 錐は高い対称性を持ち、安定T2 錐の特異点解消のモデルは全て具体的に求められる。別の特異点として2つのスペシャルラグランジュ平面の横断的交叉を考える。この場合、一般に対称性は無く、特異点解消のモデルの決定は未解決問題である。
本講演では、ある仮定の下で特異点解消のモデルの一意性を証明する。証明方針は以下の通り。2つのスペシャルラグランジュ平面をそれぞれ1点コンパクト化し、そのPlumbing を取る。Pluming は境界付完全シンプレクティック多様体で境界は接触多様体である。特異点解消のモデルはPlumbingの中でコンパクト化され、深谷圏の対象を定める。Abouzaid・Smith の定理1から特異点解消モデルのコンパクト化の(導来圏における)同型類の一意性が得られる。
一方、Thomas・Yau の定理により、(導来圏における)各同型類にスペシャルラグランジュ部分多様体は1つしか無い。しかし、特異点解消モデルのコンパクト化はスペシャルでない。ここで特異点解消モデルの漸近挙動に仮定を置く。すると、ある最大値原理が成立し、Thomas・Yau の方法が使える。従って、特異点解消モデルのコンパクト化の一意性が成立し、証明が完結する。