Sierpiński gasket上の測度論的Riemann構造に対する解析・幾何
幾何学セミナー
開催期間
2013.6.28(金)
16:00 ~ 17:30
16:00 ~ 17:30
場所
九州大学 伊都キャンパス 伊都図書館3階 中セミナー室2
講演者
梶野 直孝 (神戸大)
概要
木上 [Math. Ann. 340 (2008), 781--804] はSierpi\'{n}ski gasketと呼ばれる自己相似フラクタルにおいて「測度論的Riemann構造」を導入しその解析・幾何的性質を調べた.そこでは関数の「勾配ベクトル」,「Riemann体積測度」,「測地距離」といったRiemann幾何学的な概念が自然に定まり,かつ対応する熱核が上下のGauss型評価を満たすことが同論文の結果により知られている.
本講演では,この場合のLaplacianの固有値のWeyl型漸近挙動に関する講演者の結果を紹介する.固有値の漸近挙動を考えると極限には測地距離に関する領域のHausdorff測度の定数倍が現れ,さらにHausdorff測度は「Riemann体積測度」とは互いに特異であるという真新しい現象が見られる.さらに最短測地線の特徴付けに関する結果を紹介し,応用としてRicci曲率の下限に関する条件であるSturm, Lott-Villaniによる曲率次元条件$CD(k,N)$や太田,Sturmによる測度の縮小性$MCP(k,N)$が成り立たないことを示す.時間があれば他の自己相似フラクタルへの拡張の(不)可能性にも触れる.