分野別セミナー

ビッグデータという言葉が一般的になって早10年、今やあらゆる分野でデータの活用、研究が行われその進歩は留まるところを知らない。医療の世界でもそれは同様であり、昨今のキーワードの一つとして「リアルワールドデータ」（以降、RWD）が挙げられる。ではRWDとは何なのか？医師であっても3人に1人は「名前程度しか知らなかった」（メドピア社調べ、2023）との調査もあることから、実は医療関係者の間でも浸透したとは言えない言葉のようである。その中途半端な理解が原因となり、全てを解決してくれる夢のようなデータだと勘違いされることや、一般的にRWDの枠組みに入らないデータをRWDと称している事例など、誤解、誤用が散見される。また、RWD解析においては統計解析のフェーズが重視され、モデルの理論やロバストな解析手法などの研究は統計学者や計量生物学者の先生方によって盛んに行われているがその前段階である膨大なデータを如何に分析できる形へと昇華させるかについては、実はあまり考えられていない。発表者は医療関係者としてではなく、データを提供する者として、時にデータを解析する者として2014年よりRWDに携わっている。本発表では、RWDについての概説から始め、実際の活用事例、RWD解析のためのデータ作りについて、データに直接触れる現場の立場から紹介を行う。