超平面配置の対数的ベクトル場入門I (第五回多項式数学セミナー)(全三回から四回の予定)
開催期間
10:00 ~ 12:00
場所
講演者
概要
超平面配置とはベクトル空間中の超平面の有限集合である。その起源はワイル群、特に対称群の鏡映の鏡映面の集合の研究であり、そこに限っても群論・(不変式)環論・特異点論・トポロジー・ルート系・表現論・組合せ論など様々な研究分野・手法とつながりを持つ。超平面配置はこのワイル群の群をなくして超平面の有限集合として一般化したものと考えられ、起源に沿って代数・代数幾何・トポロジー・組合せ論・特異点論・表現論など様々な手法を用いた研究がなされている。超平面配置の研究は手法ではなく目的であるため、手法に拘る必要はなく、むしろこれらの手法の交差・交流が興味深い研究対象である。
本講演では講演者が専門としている超平面配置の代数的側面、特に対数的ベクトル場について導入的な講演を行う。対数的ベクトル場は端的に言えば与えられた超平面に接するような多項式ベクトル場全体のなす次数付き加群であり、射影空間上の層と捉えることも可能である。この加群が自由である場合、対応する配置を自由配置と呼ぶが、このとき自由基底の次数を指数とよび、上記ワイル群から定まるワイル配置の場合を考えると、これも自由でワイル群の指数と一致することがわかる。よって自由配置は指数が定義できるという意味でワイル配置の正当な一般化であり、寺尾の分解定理を通してワイル群とその指数が持っていたいくつかの組合せ論あるいはトポロジーの性質が自由配置にも反映されている事がわかる。このような事情、及び講演者らによる対数的ベクトル場と正則冪零Hessenberg多様体のコホモロジー環の記述理論の進展などもあって、超平面配置の対数的ベクトル場は本分野の中心的な研究対象である。
第一回講演では、基本事項と定義の確認、自由性の判定法である斎藤の判定法などを導入したあと、シンプルながらまだまだ問題が多く残っている三次元配置と二次元多重配置に興味を絞って解説する。いくつかの未解決問題も提示しつつ、具体例及びMacaulay2などを用いた計算例も紹介することで、本分野研究に向けた入門的な講演としたい。
リンク
セミナーHP