多重W代数について
数理物理セミナー
開催期間
2022.5.20(金)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
C-513 中講義室および Zoomミーティング
講演者
杉本 祥馬 (九州大学)
概要
頂点作用素代数(VOA)は1980年代に2次元共形場理論の数学的定式化として導入され、様々な分野と関係する興味深い対象である。 これまでは主に半単純なVOAが研究されてきたが、近年、高次元の場の理論や量子トポロジーの観点から、半単純ではないVOA(logVOA)の研究が注目を集めている。 logVOAの主要な(そして、ほぼ唯一の)既知の例として、(単純Lie代数gに付随する)多重W代数と呼ばれるVOAが知られており、gがA_1型の場合にはよく研究されている。 しかし、一般のgに付随する多重W代数は複雑な構造を持ち、従来の代数的手法が通用しないことから、研究成果は長年皆無であった。 本講演では、講演者による幾何学的アプローチを用いた多重W代数の様々な基本的な性質の証明と、今後の展望について話す。 まず、多重W代数の代数的定義と幾何的定義を与え、それらが一致することを示す(Feigin-Tipunin予想、2010)。 これにより、幾何学における様々な強力な定理を、多重W代数の研究に使用することが可能になる。 特に、多重W代数の既約表現の構成、G×W_k(g)-加群構造の決定、q-指標の計算などを、層コホモロジーの双対定理を用いて実行する。 最後に、前述の結果と量子トポロジーの関係と、今後の展望について説明する。
本セミナーは代数学セミナーとの共同開催です