多体電子系におけるマルチスケール解析について
数理物理セミナー
開催期間
2013.10.21(月)
16:00 ~ 17:00
16:00 ~ 17:00
場所
九州大学 伊都キャンパス 伊都図書館3階 中セミナー室7
講演者
鹿島 洋平(東大数理)
概要
結晶格子上で相互作用する電子たちからなる正の温度下での量子多体系を考える。分配関数の有限次元グラスマン積分の極限としての定式化から、物理量の熱平均や相関関数のグラスマン積分表示が導かれる。したがって多体電子系における物理量や相関関数の性質は有限次元グラスマン代数上の解析を通して調べることができる。たとえばそれらの熱力学極限の存在や結合定数に関する解析性を証明する場合、グラスマン・ガウシアン積分表示の体積によらない評価が必要となるが、もし共分散行列の行列式が体積によらずに有界ならば、比較的シンプルなシングルスケール解析によって必要な評価を作ることができる。共分散行列の行列式にそのような有界性がない場合に有効な方法として松原振動数上のマルチスケール解析が知られている。
本講演では、多体電子系におけるマルチスケール解析の典型として松原UV積分を数学的帰納法によって厳密に構成し、まだシングルスケール解析が適用できないクラスの多体電子系に応用する方法について解説する。