負曲率多様体上の測地流 -- 転移作用素のスペクトルとGutzwiller-Voros ゼータ関数
数理物理セミナー
開催期間
2013.6.13(木)
16:00 ~ 17:30
16:00 ~ 17:30
場所
九州大学 伊都キャンパス 数理学研究教育棟3階 小講義室2
講演者
辻井 正人 (九大数理)
概要
負曲率多様体上の測地流は双曲的(カオス的)な振る舞いをする流れの典型として,Hadamard 以来長年研究されてきた.本講演ではそのような流れの関数や微分形式への自然な作用(転移作用素の1パラメータ群)のスペクトル的性質,及び,力学系のゼータ関数の零点の配置について,(だいぶ前からできそうだ,できそうだと言っていて)最近になってやっとできた結果について述べたい(Frederic Faure 氏との共同研究)。
主結果は生成作用素の固有値やゼータ関数の零点が虚軸に平行ないくつかの帯状の領域に含まれるというもので,特に Gutzwiller-Voros ゼータ関数の場合には零点は虚軸の近傍に集中することを示す.これは双曲曲面の場合の Selberg の古典的な結果の1つの拡張と見なすことができる.また,量子カオスの半古典論においてはGutzwiller-Vorosゼータ関数の虚軸の近くの零点は多様体のラプラス作用素のスペクトルと深く関係すると「仮定」されているのでその点でも興味深いが,厳密なことはまだなにもわからない.