亀裂進展数理モデル構築とその数学解析の試み
現象数理セミナー
開催期間
2013.2.22(金)
15:30 ~ 17:00
15:30 ~ 17:00
場所
九州大学 伊都キャンパス 数理学研究院/IMI3階 中セミナー室6
講演者
木村 正人 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
概要
本講演では,ここ数年来,講演者が取り組んで来た亀裂進展現象の数理モデル構築の試みの現状について話したいと考えている.
弾性体中の亀裂進展現象は小規模なものでも,やがて大規模な構造体全体の破壊を引き起こす可能性があり,工学的に重要な問題であると同時に,マルチスケールかつ不安定な現象として数理モデリングの立場からも興味深い問題である.実際,有限要素法などによる構造解析の延長として,多くの工学シミュレーションが行われているが,講演者の知る限り,数学的に閉じた偏微分方程式モデルはこれまで確立されていない.
このような現状に数学の立場から少しでもアプローチすべく,共同研究者らとともに,講演者は次の3つの側面から亀裂進展現象に取り組んで来た.
1.Ambrosio-Tortorelliの正則化エネルギーの不可逆系勾配流としての亀裂進展フェーズ・フィールド・モデル(PDEモデル)の導出と解析
2.弾性体を近似するバネ・ブロック系上の離散フェーズ・フィールド・モデルの提案とその解析
3.亀裂進展に伴う弾性エネルギー解放率の数学解析
これらは全て,Griffith理論(1920)及びFrancfort-Marigoモデル(1998)に基づくエネルギー変分的アプローチである.これらのアプローチで得られたいる部分的な結果を紹介しつつ,亀裂進展現象の数学解析の現状を解説したい.