ご挨拶

数学で
人生を豊かに

数学は厳密な論理と抽象性によって真理を探求する学問です。その魅力の一つは、数学原理が普遍であり、時代や文化に関係なく、その発見が有史以来何十世紀にもわたって絶え間なく続いてきたことです。数学は20世紀に抽象化が非常に進み、330年以上解けなかったフェルマーの定理は数論と幾何学の抽象論を駆使して1995年に証明されました。それは、フェルマーが330年前に余白に書けなかった証明とは多分大きく異なることでしょう。

21世紀、人類は量子,宇宙,生命・医療の分野で想像を超える勢いで進歩しています。このような人類の発展の中で、抽象数学も大きな役目を担っています。例えば、21世紀の必携アイテムであるAIやデータサイエンスなどの分野では抽象数学の手法が広く活用されています。特に、暗号やセキュリティでは、抽象数学の中で、社会への応用が最も遠いと思われていた代数学が重要な役割を果たしています。世界を繋ぐネットワーク構造にはグラフ理論が応用され、CTスキャンやMRIにはフーリエ解析が応用されています。また、災害予測や天気予報にも数学が応用されています。一方、人類社会とは一見無縁と思われる数学の研究も存在します。実際、未だに解明されない純粋数学の難問がたくさん存在します。例えば、素数の解明は最も深遠な問題の一つです。2000年に発表されたクレイ数学研究所の7つのミレニアム問題も、未だ一つしか解かれていません。これらの問題に日々悪戦苦闘している純粋数学者もいます。九州大学理学部数学科及び大学院数理学府の特筆すべきところは、抽象数学から社会に役立つ数学まで、多岐にわたる数学の教育と研究を行っているところです。

数学を取り巻く環境の変化は、数学を学ぶ人々の進路にも影響を与えています。九州大学理学部数学科または大学院数理学府の卒業生たちは、産業界や技術分野でのキャリアを追求する選択肢ももつようになりました。また、数学そのものではなく数学的思考が重宝されることも多くなりました。そのため、数学を学ぶ価値はますます高まっております。

数学に興味を持つ皆さんには、是非、理学部数学科大学院数理学府のパンフレットや公開講座オープンキャンパスのページをご覧いただければ幸いです。

廣島 文生
大学院数理学研究院長・数理学府長
マス・フォア・イノベーション連係学府長