先輩の声

高専から数学の
厳密さに
惹かれての
編入学

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理学部数学科 卒業 大学院修士2年(数理学府) 喜納 勝海 さん

問題が解けたときのうれしさ

─どのようなきっかけで数学に興味を持ちましたか

小学生の頃くらいから算数、数学が好きで、興味を持っていました。得意な教科だったことと、問題が解けたときのうれしさが、好きになった大きな要因だと思います。
また、中学、高専で数学を楽しそうに教えてくださる先生方に出会えたことも大きかったと思います。
現在専門分野として学んでいる整数論に興味を持ったのは、サイモン・シンの『フェルマーの最終定理』を読んだことがきっかけでした。

ゼロから理論を構成したい

─理学部数学科へ編入学した理由を教えてください

もともと理系科目全般が好きで、高専で工学を学んでいました。そのうちに、物理や工学にないであろう数学の厳密さに興味を持ち、独学で極限を厳密に扱うための理論(ε-δ論法)を学んで「理学部数学科へ行って勉強したい」という思いが強くなりました。
当時は証明されていない事実を使うことに対して若干の拒否感があり、理学部数学科で学べばゼロから理論を構成できると思ったことも、編入学を目指した理由です。
九州大学を選んだ理由は特にありませんが、学習・研究環境が充実していると感じた大学の中から選びました。

抽象化して議論を進める

─理学部数学科で学ぶ数学について教えてください

大学数学と高校数学の大きな違いは、厳密さと抽象度だと思います。厳密さについて有名なところでいえば、高校で習った微積分の定義を、ε-δ論法を用いて定義し直すというものが挙げられます。
もちろん具体的な問題を考えることはたくさんあるのですが、抽象化して議論を進めることで、定理の適用範囲が広げられたり、議論の本質が見えやすくなるなどのメリットがあります。学び始めた頃は抽象的は議論につまずく方も多いと思います。実際私も、「位相」という距離を抽象化した概念を勉強したときはとても苦労しました。
理学部数学科では授業の他にセミナーというものがあり、3年生の後期から始まります。セミナーでは、本や論文を読んで勉強してきた内容を、指導教員や同じ研究室の仲間に講義のような形式で発表します。自分が発表者となるので、準備のために議論を深く考える癖がつき、自分では気付かなかった点を人から指摘してもらえるので、数学の勉強法として非常に有用です。

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全く異なるように見える分野が実は結びついている

─数学を学んで面白いことや大変なことを教えてください

面白いことは、やはり「問題が解けた」「証明が理解できた」という瞬間が一番楽しいと感じます。少し前は理解できなかった議論が理解できるようになったときも、自分の成長を感じることができて嬉しい瞬間です。
数学そのものに関して言えば、私は「全く異なるように見える分野が実は結びついている」という現象が非常に面白く感じます。現在私が興味を持っているモジュラー形式はそのような側面があり、異なる分野の橋渡しになっていると思います。
勉強はもちろん大変です。数学書を1ページ読み進めるのに1日以上かかることもよくあります。論文は英語で書かれていることもあり、より時間がかかってしまいます。
「自分のペースで学習を進めることが大事」と分かっていても、周りには優秀な先生や同級生がたくさんいるので、焦りや不安を感じてしまうことも度々あります。

まずは修士・博士課程をやりきること

─これから叶えたい夢・目標を教えてください

ひとまず修士・博士課程をやりきることが当面の目標です。研究者を目指すかどうかは今のところ決められておらず、博士課程の間に考えます。
現在研究している分野の他にも、整数論全体に興味があるので、卒業するまでにできるだけ多くの分野に触れることも目標です。

編入生に対してのサポート

─九大数理の良いところを教えてください

・編入生に対してのサポート
私が入学したとき、3年次編入して最初の半年は、位相・微分積分・線形代数の補講がありました。この補講は編入生だけで行う少数授業なので質問もしやすいです。高専から編入して、数学科1・2年で学ぶ内容が十分理解できていなかった私にはとてもありがたい制度でした。単位についても、基幹教育と呼ばれる授業の単位は全て与えられるので、数学以外の科目に時間を取られず勉強に集中できます。

・先生の数が多い
九大数理は、所属している先生の数が他の大学と比べても多いと思います。ですので、自分の興味に合う分野を専門にしている先生を見つけやすいです。九州大学は特に産業数学に力を入れているので、応用的な数学に興味がある方には理想的だと思います。

・図書館の資料、電子資料が充実している
九大数理がある伊都キャンパスには、中央図書館と理系図書館があり、理系図書館には専門的な数学書が豊富に所蔵されています。数学を学ぶ際は何冊かの本を読み比べることも多いので、学習にとても良い環境です。また、電子書籍も豊富で、特に洋書の電子書籍が充実しています。

・院生室が充実している
大学院生になると院生室が割り当てられ、勉強や研究に集中できる環境が整っています。

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後輩へのメッセージ

理学部数学科への進学・編入学を考えている方へ。
もし大学数学に興味があるのであれば,ぜひ理学部数学科への進学をお勧めします。せっかく大学に行くなら、興味のある学問を学ぶのが一番だと思いますし、同じ志の仲間と議論をするのはとても楽しいです。
就職に関しての不安があるかもしれませんが、九州大学はインターンシップ制度も充実しています。先生方いわく、最近は数学ができる人材に需要があるようなので、あまり心配はいらないと思います。私の周りもなんだかんだで就職活動を乗り切っています。
最後に、大学数学は抽象度が高く、高校数学に比べてギャップを感じる方も多いようなので、一度、数学科で使われている微積や位相の本を読んでみると良いと思います。

※掲載されている内容は2023年取材時のものです

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わたしが九大数理を選んだ理由