先輩の声

たくさん寄り道、
たくさん勉強、
たくさん挑戦

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理学部数学科 卒業 数理学研究院助教 松坂 俊輝 さん

数学の本とテストや模試の良い結果

─どのようなきっかけで数学に興味を持ちましたか

転機はいくつもありますが、最初のきっかけは小学生の頃に読んだエンツェンスベルガー著の「数の悪魔」という本です。小さい頃から本を読むのが好きで、学校の図書室や五島で一番大きな図書館に頻繁に通っては、文学作品から理系書まで種類を問わず様々な本を読み漁った記憶があります。
多くの出会いの中で、高校生の頃には「ベルヌーイ数とゼータ関数」という本に触れて、整数論の魅力に取り憑かれました。しかし思い返すと、数学に限らずどの分野も大好きでよく勉強していたはずです。
もしかしたら、最初に「数学が一番好き」と思うようになった理由は、学校のテストや模試で安定して良い点数を取れるからという短絡的なものかもしれません。

高校の数学の先生に勧められて

─理学部数学科へ入学した理由を教えてください

中学1年生の頃に担任の先生に憧れて、数学を仕事にできれば楽しいだろうなと漠然と考えるようになりました。ただその頃は、身の回りで数学を仕事にしている大人は中高の数学の先生しかいなかったので、最初は教育学部を目指していた覚えがあります。
高校生になると、数学の先生に「数学をとことん勉強するなら理学部数学科という選択肢もあるけど、九州大学なんてどう?」と勧められるようになり、そうしてなすがままに進路を決めました。今振り返っても、この決定がこれまでの人生における最高の選択だったと思います。

広大な数学の世界を学ぶワクワク感

─理学部数学科で学ぶ数学について教えてください

理学部数学科に入学して最初に驚愕したことは、大学の図書館に行くと建物を埋め尽くすほどに数学の本が並んでいたことでした。高校では通常、数学I・A・II・B・III・Cのたった6冊の教科書と本屋さんに並ぶ複数の参考書・問題集にしか出会わないわけですが、大学に入ると、突如その何百倍、何千倍もの数学の本と対面することになります。
この広大な数学の世界のすべてをこれから勉強するのかと期待に胸を躍らせたものですが、実際は、大学に入学して10年以上毎日勉強し続けて数学のプロになった今でも、そのたった1%も理解できていません。
それでも当時のワクワクは勢いを失うことなく、今でも図書館を探検しては新しい数学を勉強し続けています。高校までの数学と大学で学ぶ数学の大きな違いは、このワクワクの大きさの違いだと思います。

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「ゆっくりじっくり」同じことを考える

─数学を学んで面白いことや大変なことを教えてください

一つの問題を数日、数週間、数ヶ月、時には数年かけて考え続けるというのは、数学の楽しい一面です。
小さい頃から同じことにじっくり取り組むことが好きで、あるときは毎日図書室に通って宇宙の図鑑のイラストを模写し続けたり、またあるときは新聞のコラムを毎日ノートに書き写すとか、天気予報の欄を切り取ってノートにまとめて気圧の動きを観察するとか、そういうことばかりして遊んでいた覚えがあります。
中高の頃はより本格的に、数学の先生に定期的にパズルや難しい問題を貰っては、解けるまで1週間でも1ヶ月でも考えて、解けたら次の問題を貰いに行く、ということを繰り返していました。
この「ゆっくりじっくり」同じことを考えることの楽しさというのは、数学を学んだからこそ自分の身に深く刻まれたことの一つだと思っています。

色んな分野に飛び込み挑戦し続ける

─これから実現したい目標・将来の展望を教えてください

「何も知らないときの方が怖がらずに色々挑戦できて、難問もあっさり解けたりするかもしれませんよ」というのは、大学1年生のときに先生から教わった言葉です。
最先端の数学の研究は抽象化が進んでいて高い専門性を要するため、問題を理解するだけでも膨大な勉強が必要になることがあります。
一方で勉強しすぎると先人たちの数々の失敗を目の当たりにすることになり、問題の難しさに怖気付いてしまったりもします。
これは目標というよりは座右の銘に近いのですが、この先生に教わった言葉をいつも心に留めて、色んな分野にとりあえず飛び込んでみて、興味の赴くままに探検や宝探しの挑戦を続けていきたいと思っています。

あらゆる分野のプロフェッショナルが在籍

─九大数理の良いところを教えてください

理学部数学科に限らないことですが、あらゆる分野のプロフェッショナルが在籍する大規模な総合大学であることは九州大学の特徴の一つです。
数学を勉強したり研究したりしていると、いずれ英語の論文を読んだり書いたりするようになります。ときにはドイツ語やフランス語も必要になったりしますし、大勢の前で軽快なトークを求められることもあります。意外に思われるかもしれませんが、数学を追究するには数学以外の素養も大切になってくることが沢山あるのです。
学部生の頃の時間割を見返すと、中高の教員免許取得も含めて数学以外の講義をかなり過剰に受講して勉強していたようで、その全てがちゃんと今の自分を形作っているように思います。
一人ひとりの夢に応じて、いつでも、どんなことにでも挑戦できる。理学部数学科は、そんな環境が整っている素晴らしい場所です。

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後輩へのメッセージ

小さい頃から大切にしている言葉ですが、「好きこそ物の上手なれ」とはまさにその通りだと思っています。私は読書や中高の先生たちの影響で大好きな数学に出会いましたが、タイミングやきっかけが違えば、また違うものを好きになって違う仕事をしていたのかもしれません。
もしかしたら、将来全く違うものに興味が移って熱中することがあるかもしれませんが、それはそれで面白そうだと思っています。
ありきたりなメッセージかもしれませんが、時間を忘れて熱中できるような素敵なことを見つけられるように、たくさん寄り道しながらたくさん勉強して、そしてたくさん挑戦してみてください。

※掲載されている内容は2023年取材時のものです

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わたしが九大数理を選んだ理由